235:逢い難い明師
娘は少し大きくなると、弟が欲しいとねだった。私と妻の月玲は二番目の子供をつくろうとしたが、妊娠中、妻はひっきりなしに出血していた。最初は流産の兆しかと思ったが、超音波検査で、子宮外妊娠が確認された。二ヶ月の間、私たちは胎児を失う心配と苦しみを味わった。妻も出血が多すぎたため、体の具合が悪く、虚弱となった。さらに、仕事上の人事が不安定な上、さまざまな出来事が相次ぎ、心身ともに疲労していた。
2004年12月4日に、医師の手配で流産の手術を行う予定になった。だが、妻がかつて麻酔薬にアレルギー反応があった事から、私は手術の安全性を殊更心配した。その時、二年くらい前に方兄弟子の息子が疱瘡に罹り、リンチェンドルジェ・リンポチェに助けられた事を思い出した。その時の私は、この世間でかように実証の多い、大能力、大慈悲のある 上師の事を聞き、心の中で、このような大修行者に強くあこがれた。しかし、時間とともに、あこがれの心が次第に遠のき、正法を聞く機縁も逃していたことに気が付かなかった。苦境に陥り、やっとその時の記憶がだんだんと甦り、私たちはついに大慈大悲の尊い金剛上師リンポチェに拝謁した。
私たちが リンポチェに手術の順調を求めると、リンポチェは「因果を信じるか?このような行為が生き物を殺す事だと知っているのか?あなた達は自分の子供を殺そうとしている事を知っているか?」と問うた。私は棒で一喝された様だった。十数年も念仏していながら、五戒の初めの「不殺生戒」すらはっきり分かっていなかったのだ。心中恥ずかしさでいっぱいになった。リンポチェはまた、こう開示した「以後肉を食べないこと」「懺悔する心を持ちなさい」、「信じることこそ功徳の母だ。すべてを仏菩薩に委ねなさい。」その他の兄弟子の胎児も水脳やダウン症、子宮外妊娠などを経験していた、因果と上師の話を信じれば、生まれた子供は全部正常だという。リンポチェの話を聞いた時、私と妻はその場でそれを信じた。
リンポチェは私達にあわてて手術をしないよう諭し、仏菩薩と上師を信じれば、明日又来なさいと言った。実はその時、私は既にすべてをリンポチェに委ねることを決めていた。月玲も懺悔をし、この子の障害も病も全部私たちの因縁だと思うようになっていた。業を受け入れて、この子を生むことになった。その夜、予定した手術をキャンセルしたが、主治医は私たちの決定に納得せず、何度も迷信に陥らないよう勧めた。しかしこれらはいずれも私たちの決心を動揺させるものではなかった。
次の日(12月2日)リンポチェに会う前に、月玲は突然腹部の激痛で気を失った。月玲は看護士で、3.5センチの子宮外妊娠胚胎がいつ破裂して、大出血する危険があるかを知っていた。これは婦人科の重い病気で、母体を損なう危険性もあった。しかし私たちは依然 リンポチェを深く信じていた。リンポチェと会うと、リンポチェはすぐ「あなたは死なない。」と言った。月玲は上師がなぜ自分が死ぬかもしれないと思っていたのを知っていたのかとたいへん驚いた。そして、月玲に加持を行い、私たちに翌日の施身法に参加しなさいと言い、また宝石店の兄弟子に明日妻のために柔らかい座布団を準備する様にと言付けた。
更に、私はリンポチェに亡母を済度するよう頼んだ。リンポチェもすぐに承諾してくれた。そして亡母はいつも私たちの身辺いると示し、しかも、私の弟と妹の結婚のことを心配していると言った。(亡母は生前、確かに弟と妹の結婚のことを心配していた)知恵と神通を兼備しておられるリンポチェの為す全ての事に誤りがなかった。
12月3日の施身法法会の当日、台風の接近で風雨が激しくなっていた。しかし私たちの法会に参加する決心には変わりがなかった。私たちは懺悔の心を以って リンポチェに対する大いなる信心を胸に道場へ向かった。
リンポチェが法座に座った後、月玲の席が快適かどうか心遣いをしてくださった。法会が終わた後、リンポチェは私を壇城の前へ呼び寄せて甘露丸を二つくださった。そして私に帰宅したら、妻にまず一つ服用させ、翌朝もう一つ服用させる様指示した。私は当時 リンポチェの意図がまったく分からなかった。
翌日の朝、妻は大出血した。妻は自然流産だと判断した。血塊中に胚胎の残骸を見つけ、これを確認した。医学的にみると、子宮外妊娠は自然流産する可能性がない。しかし リンポチェの法と加持を経て、事は簡単に解決した。是は不思議な事だった。
再びリンポチェに面会を申し込むと、リンポチェは私たちの子供が淨土へ済度されたといい、母も善道に向かった。施身法の夜、リンポチェは子供が済度されたことを知り、甘露丸は月玲を守る為の物だった。私は此処で始めてリンポチェの甘露丸の意味を悟り、リンポチェの大いなる助けに感謝するばかりだった。
私たちが重い業を軽く受けとめて、一途平穏順調にやって来られたのは、ひとえにリンポチェの慈悲の保護と加持によるもので、其れが無ければ我々の未来は必ず暗く、光を見出すことができなかった。リンポチェは我が一家に再生の機会を与えてくれた。謹んで合掌、讃えて曰く、
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。仏を唱え、経を読む事十数年、
五大山を探すが、明師には逢い難く、法は求め難し。
今幸いに上師に出会い、帰路に光を見出す。
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。一言で十年の疑を喝破せむ。
説く法は円熟で欠けるを知らず、醍醐の灌頂を楽しむが如く、
真の言葉は一句一句心に響き、心の中の無知と闇を破る。
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。施身法は極めて殊勝、
限りなき法力は衆を救い、大慈大悲は六道に及ぶ、
悪果と報いを解き消して、重い業を軽く受け止め加持を授かる。
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。諄々と教え諭して信仰と願いを行なわしめ、
目の前に諸々の障害が現れても、強い信心は迷いがなく、
法を護持して万難を排除し、仏を学ぶ道を嶮しきから平坦に換える。
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。力を尽くして教派に遍く布施を行ない、
強い力を以って戒を守りその定力は深し、強い力を以って屈辱に耐え大勇を持つ、
強い力を以って仏陀のように精進し、強い禅定の力は無辺の智恵を持つ。
賛嘆し、顏上師に感謝せむ。海のような智恵で衆生を済度し、
方便力有りて弁法は巧み、願力堅くて金剛石の如し、
力と願いが相助け合う菩薩の行、智恵の光は十方界を遍く照らす。
十波羅蜜は入れ替わり重なって現れ、十地の修行は衆を更に豊かにする、
慈悲力は大きいのか?天と人と地獄の六道衆、
声を揃えて慈悲深い父と叫ぶ。果位はどの境地なのか?
教派中の法王と成就者は、顏上師を喜び賛嘆する。
功徳は殊勝なのか?天竜八部及び仏法の守護者
十方三世の仏と菩薩は、顏上師を賛嘆し加持するなり。
寶吉祥仏法センター弟子 陳寶鑫、廖月玲、陳禹安2007.03.06
2008 年 12 月 16 日 更新