069:あらゆる事に精通しておられるリンチェンドルジェ・リンポチェ

リンチェンドルジェ・リンポチェのお人なりに、初めて間近に触れましたのは、2007年12月京都でのトロッコの旅の折でした。実はその頃、私はほとんど何も分からず、母が十数年前に皈依したこの宗教が、どんなものであるかもはっきりとは知りませんでした。しかし、日本で道場の若い兄弟子達と接する中で、私は、リンチェンドルジェ・リンポチェの過去の事跡、さらにはリンチェンドルジェ・リンポチェにお力添え頂いた兄弟子達の内心の感動をゆっくりと理解して行き、その真実の、誠の思いは、私の心に深く根を下ろしたのでした。

私が、リンチェンドルジェ・リンポチェのお慈悲を深く感じたのは、トロッコ車内においてでした。台湾を遠く離れた日本の衆生の済度のため、兄弟子達は、トロッコ車内できちんと腰掛けておられました。みなが秩序と規律を守って着席し、しかも非常に静かな様子を見て、私は兄弟子達を愛しくさえ感じ、また「この宗教団体は、かつて知っていた他の宗教団体とは全く違う」と感じました。私がこう思っている時、ちょうどリンチェンドルジェ・リンポチェは読経を始められ、みなで心を込めた念誦が道中続きました。非常に殊勝な光景で、このような人、事、物との遭遇により、私はリンチェンドルジェ・リンポチェに対する畏敬の念を抱くようになったのです。

帰国後すぐに法会への参加を申し込んだところ、リンチェンドルジェ・リンポチェは私に「なぜ法会に参加したいのか?」とお尋ねになり、私は浅はかにも「幸せになりたいからです!」とお答えしました。思えば、このような答えが正しいはずがありません。リンチェンドルジェ・リンポチェは「後の方に立って考えてみよ」とおっしゃいました。しかし、よくよく考えてみても、やはり他の理由が思い浮かびませんでしたが、この時母が私の傍に現れ、私は訳も分からず泣き出してしまったのです。そして、リンチェンドルジェ・リンポチェの問い掛けに再度答えました。「私は仏法を学び、自らを救い、他人も救いたいのです」と。リンチェンドルジェ・リンポチェは「まだ間違っている」とおっしゃいましたが、この時既に、私は強い緊張と激しい興奮で、言葉が出ない状態でした。けれども、リンチェンドルジェ・リンポチェは慈悲深くも、私を法会に参加させ、仏法を理解する機会をお与え下さいました。その後、法会に二度参加しリンチェンドルジェ・リンポチェの講話を聞いた後、私は「仏法が真に追求しているのは幸せではない。自身の慈悲の心を養うため、『離苦得楽』を体得し、生死と輪迴から解脱するために、仏法を学ぶのだ」と気付かされました。法会への二度の参加後、驚いたことに、私はすぐに皈依の機会を得、両親の同意の下、皈依し、道場の一員となったのです。

リンチェンドルジェ・リンポチェの近くで過ごす機会を二度目に得ましたのは、2008年11月インド、デヘラードゥーンへの巡礼の旅でした。私は臨時通知を受け、リンチェンドルジェ・リンポチェの護衛を担当することとなり、生涯味わったことのない強い緊張を感じました。「私の上師であり、私達寶吉祥の弟子達すべての上師を護衛する…。命を掛けても勤めを果たさねばならない」と心に誓いました。そしてこの任務のお陰で、リンチェンドルジェ・リンポチェの近くに仕える機会を得、リンチェンドルジェ・リンポチェの測り知れない深いお智慧を感じることができました。拳法をご教授下さる時には、リンチェンドルジェ・リンポチェの功夫の巧みさを知りました。しっかりとして安定した下半身に力強い拳。二十歲代の、いわゆる「壮漢」である私達よりも動きが素早く、「今後はさらに大人しくリンチェンドルジェ・リンポチェのお言葉を聞かなくては」と思い知らされるに十分でした。また、仏学院宿泊中のある日の午後、ちょうど少しの空き時間ができたため、幸運なことに、リンチェンドルジェ・リンポチェから功夫を学ぶ機会に恵まれました。リンチェンドルジェ・リンポチェの護衛を勤める張教官、阿修さん、褚兄弟子はみな功夫がうまく、リンチェンドルジェ・リンポチェのご高覧に供することができるほどです。しかし、私は水泳と歌を唄うことしかできないため、リンチェンドルジェ・リンポチェに「私は唄うことしかできません」と正直に申しました。リンポチェは、私に歌を披露する機会を下さいましたので、「somewhere over the rainbow」 の一節をお聞き頂きましたところ、リンチェンドルジェ・リンポチェの音楽への理解が思い掛けないほど深いものであることに驚きました。リンポチェはその場 で、「喉だけで歌っており、丹田を用いていない。しかも、歌詞の世界に入り込んでいない。歌唱では徐々に力を入れ盛り上げて行くべきだ」と私の歌唱の問題点をご指摘下さいました。さらに驚いたことに、私達に見本をお示し下さったのです。私はその時「柔らかく、また力強いリンチェンドルジェ・リンポチェの歌声を拝聴できるとは。自分は世界一幸運な人間だ」と思いました。リンチェンドルジェ・リンポチェは歌が本当にお上手です。リンチェンドルジェ・リンポチェから直接ご教授賜った歌唱の秘訣は、私の宝物です!リンチェンドルジェ・リンポチェ、どうもありがとうございました。

実は私の成長の過程で、リンチェンドルジェ・リンポチェは私達家族にお力添え下さっていたのです。リンチェンドルジェ・リンポチェの救いを求めずにはいられない家人は、間断なく現れ、殊に生老病死に関しては、すべてにおいてリンチェンドルジェ・リンポチェの恩惠を受けていると言っても過言ではないくらいだったのでした。リンチェンドルジェ・リンポチェという、この大修行者に対して、私は莫大な借りがあり、とてもとてもお返しすることは叶いません。ただ、まじめに仏法を学び、生死を解脱するよう努力し、尊貴なる金剛上師リンチェンドルジェ・リンポチェに報いたいと思います。

弟子 王詠霖

2009 年 02 月 04 日 更新