051:上師であり、父であり

父の境遇と言えば、他のリンチェンドルジェ・リンポチェに助けられた人に比べると、本当にたいした事ではありません。しかし、上師リンチェンドルジェ・リンポチェの目から見れば、衆生のことは全て大事な事で、衆生は平等、貴賎の隔てが無く、懺悔の心さえあれば、其れが貴き供養なのです。

リンチェンドルジェ・リンポチェと縁を結んだのは二年前の事でした。訴訟中の父が得た終局判決は、父に対してとても不利でした。しかも上訴はもう出来ませんでした。この判決に向き合った時、家の中には憂いの雰囲気が漲っていました。家族は最後の力を絞り、わずかな可能性も探し出そうとしました。それは家の財産を使い尽くしても、一筋の明かりを見出そうとするものでした。しかし其れは大海原で浮沈するようなもので、家族は意気消沈し、疲れ切ってしまいました。丁度そのとき、蕓珊兄弟子の紹介で私たちは宝石店でリンチェンドルジェ・リンポチェに拝謁しました。

初めて宝石店に入った時、そこに居る兄弟子と信衆が喜びに満ちていると感じました。何故なら彼らは同じ明灯を持って居るからです。その明灯とはリンチェンドルジェ・リンポチェです。リンチェンドルジェ・リンポチェの前に跪いて事情を話しましたが、目にしたのはリンチェンドルジェ・リンポチェの鋭い眼差しと念珠を繰り返し爪繰っている姿でした。(その後、私はリンチェンドルジェ・リンポチェが衆生を加持しているのだと知りました。)当時、私は父の説明が不足して、リンチェンドルジェ・リンポチェが何のことか分からなく、私達を助けられないのではと心配しました。結局は私が余計な心配をしていたのです。その時リンチェンドルジェ・リンポチェは「懺悔の事を説いた録音テープを家に持ち帰って聞き、自分の間違いが何処にあるかを考えなさい」と決然と言い付けました。

家族の全員は、リンチェンドルジェ・リンポチェは私たちが自身で間違いに気付く様に仕向けている事知りました。リンポチェが説いた懺悔のテープを繰り返し聞いた後、始めて今世の事々は前世の因縁との関わりを逃れる事が出来なく、今世の行いは更に自分の子孫に影響を及ぼすことが分かりました。懺悔を学ぶのは自分が再び輪廻の善悪道に堕ちない様にする為なのです。その後、家族はまた何度も宝石店へ行きました。父が入獄する日が迫って来たので、家族全員は僅かな時間も惜しんでリンチェンドルジェ・リンポチェに拝謁しました。でも最後の一回は因縁が足りないので、父が入獄する前にはリンチェンドルジェ・リンポチェに会えませんでした。しかし今度は家族一同この前の不安を無くし、父が暫く私たちを離れる事実を受け入れました。とある一度の面接でリンチェンドルジェ・リンポチェは父に家の世話をし、子供を躾ける事を約束しました。リンチェンドルジェ・リンポチェは約束通りに為されました。父がいない間、リンチェンドルジェ・リンポチェは優しい父のように私たちの世話をし、仏法を教えました。

入獄している父の事が心配なので、初めの頃家族はほとんど毎週父を見舞いに行き、父が順応出来ないのではないかと心配していました。面会中、父を安心させるために、常にリンチェンドルジェ・リンポチェが法座で開示したことを話しました。しかし、状況は想像を超えて悪く、ある時は父の指が鼠に噛まれて炎症を起こしていました。冬なのに坊主刈りにされ、安否を尋ねると、父はいつも苦笑いしていました。私達は父の日々があまり良くない事を知っていました。父の後姿を見ていると、もともと膝が悪かった父は、びっこを引いていて、見る者の心を痛めました。この時リンチェンドルジェ・リンポチェが私たちに開示した「全てはよくなる」との言葉を思い出しました。そうです、これは父が受けざるを得ない因果応報だと信じなければいけません。子供として出来るだけ分かち合い受け入れるべきです。父が入獄した半年後のある日、監獄からの知らせで、父が別の外役監へ移され、活動も比較的自由で、環境も良くなった事を知りました。最悪の事態は過ぎ去ったのです。その上、父は行いがよかったので、帰宅の機会を得られました。家へ帰るとまず私たちの恩師リンチェンドルジェ・リンポチェに拝謁しました。縁がなく会えなかったのですが、今回の気持ちは前回と随分違いました。私たち家族は間もなく父と再会出来ると信じ、其れは唯時間の問題だと思いました。以前厄介そうな問題はもう無くなりました。

今年4月、父は仮釈され、家族は再び一緒になりました。家族全員深くリンチェンドルジェ・リンポチェの恩を受けたのです。父が再びリンチェンドルジェ・リンポチェに拝謁した時、リンチェンドルジェ・リンポチェは父にしっかり仏法を勉強し深く懺悔しなさいと開示しました。今私たちはリンチェンドルジェ・リンポチェに従って仏法の修行をしています。それはリンチェンドルジェ・リンポチェに恩返しするだけではなく、衆生の為に何かをしてあげたいと思うからです。私の経験談を聞いて、皆さんがリンチェンドルジェ・リンポチェに対して更に深い信心を起こされます様に。リンチェンドルジェ・リンポチェに感謝します。

弟子 涵湄、涵雯、涵瀧、涵汝が敬意をこめて合掌

2009 年 06 月 14 日 更新